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2013年9月16日
発表ツールについて

今年の夏は、イギリスで開催された国際会議二つとミニシンポジウム一つのかけもち参加でした。国際会議は、8月上旬にイングランド島北部のニューキャッスルにおいておこなわれた国際行動学会(Behaviour 2013, International Ethological Conferenceとthe Association for the Study of Animal Behaviourの共同開催)、そして8月中旬のアイルランド島のベルファストで行われた国際哺乳類学会議 (11th International Mammalogical Congress)です。ニューキャッスルでは、日の出町で最近まで行ってきたアライグマとタヌキの種間関係についての成果、そしてベルファストでは中国アナグマプロジェクトのブタバナアナグマの食性についての成果を発表しました。

 どちらの会議も野生哺乳類の行動生態についての内容を発表できる場所ですが、学会の雰囲気はずいぶんと異なります。ニューキャッスルの行動学のほうは、飼育下条件の行動観察の研究が大部分で、私のような、野外で取得したデータを発表する方が稀です。一方でベルファストの国際哺乳類学会のほうは大部分が野外研究。私の専門分野からすると、ベルファストのほうがなじみやすいのですが、ニューキャッスルのほうが、仮説の立て方やそれに基づいた実験のロジックがすっきりとしており、考察も深い内容まで踏み込んでいるという印象です。さらに、哺乳類の事例を扱った内容も多く、国内の行動学の傾向とは一味違っていて興味深いので、6年前に初めて参加してからこの会議は見逃せなくなりました。私の行っている野外観察データだと、データの欠損の問題や、また環境からの影響が複数、また相互作用もあるために、ストーリーは少々ダイナミックになりすぎる印象です。しかし、保全にからめた考察や、また長期データの研究で、特筆すべき素晴らしい発表内容が見られる点で、ベルファストのほうもまた、毎回楽しみです。

 行動の方は今回で3回目、哺乳類学のほうは4回目の参加でしたが、博士学生時代に、メキシコのアカプルコでの哺乳類学会議に参加したころと比べると、発表ツールの準備がとても簡単で便利になりました。メキシコへ格安航空券で行く途中に、日本から持参していくポスターを置き忘れたり、ロストバッゲージなどでなくさないか心配になったものでしたが、現在は、学会会場に事前にファイル送付すると会場でプリントしておいてくれるサービスまであります。また、行動学の口頭のほうは、ビデオを入れたプレゼンがあたりまえになっており、見ている方も実験の様子をすぐに把握できます。

発表ツールの準備が簡単になったためか、内容に集中でき、便利なのですが、しかしいずれの学会でも、口頭発表などは15分や20分の発表時間の中で、内容の詰め込みすぎのものが多いようにも思いました。逆に、多様な機能と全色カラーの色合いなど無限ともいえる組み合わせの効果を考えながら、発表ぎりぎりまで練って準備する時代なので、昔の手作りスライドの時代(撮影機を用いて現像も自分でしていた時代は、図を1枚のせた2色刷りのスライドをきれいに作るのも一苦労だった!)よりも、スライドに載せる内容の取捨選択がしにくいのかもしれません。

パワーポイントというソフトの出現は、明らかに、発表技術のブレイクスルーをもたらしたと思います。次は、どのような発表技術が革新をもたらすのか、その意味でも、国際学会には常にアンテナを張っておきたいと思います。